第14章 .
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《ヤンデレ悪役令嬢の前世は喪女でした。反省して婚約者へのストーキングを止めたら何故か向こうから近寄ってきます。【1】悪霊令嬢、反省する。》(作品 ID: 15724558)
作者:砂礫レキ (pixiv ID: 46940026)
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「もう俺を監視するのは止めてくれリコリス!昼も夜も……頭がおかしくなりそうだ!」
叫び声と同時に強く突き飛ばされる。ここは貴族学園の廊下。冷たく硬い床に頭を打ち付ければ痛いだけではすまない。
そのことを理解しているのに私の両手は昼食の入ったバスケットを大事に抱えたままだった。
中身は彼の好きなローストチキンを使ったバゲットサンドと体にいい豆のサラダ。デザートにマフィンも入っている。
全部自分が朝の四時に起きて作ったものだ。何回も失敗した代わりに、見た目も味も良いものが作れた。
おかしいわね。今貴男の横にいる彼女の真似をしてみたのだけれど、少しも喜んで貰えなかった。
昨日貴男たちが中庭で食べていたものと全く同じメニューを再現して見たのだけれど。
好物でも同じ物を連日は流石に飽きてしまうのかしら。毎日でも食べたいとルシウス様が笑っていたから私も作ってみたのだけれど。
もしかしたら、私の作った物だから彼は喜んでくれなかったのかしら。
私はただ、ルシウス様の笑顔をいつでも見つめていたいだけなのに。
朝も昼も夜も死ぬまでずうっと。
□□□□
「……いやそれストーカーだから」
保健室の真っ白な天井を見上げ私は呟く。後頭部がずきずきと痛い。
当たり前だ、受け身も取らず思い切り床に打ち付けたのだから。吐き気や首の痛みがないのが不幸中の幸いだ。
でも念のため大学病院に行ってCT検査をして貰った方がいい気がする。
「CT検査……?」
自然に浮かんだ単語にワンテンポ遅れて疑問が出てくる。
大学病院もCT検査も存在するはずがない。何故ならここはヨーロッパ風ファンタジー世界だ。
十七年間暮らしてきたからわかる。魔法も水洗トイレも舞踏会も年末テストもある中途半端に便利で不便なこの世界の妙を。
なぜ自分が過去プレイしていたゲーム世界とよく似た場所に生まれ変わったのかは全く理解できないけれど。
女性向け恋愛ゲーム『花ざかりスクールライフ』通称花スク。
タイトルとパッケージ絵の爽やかさとは裏腹に多くのプレイヤーから鬱ゲー扱いされるキワモノである。
思い出した、そのリメイク版を買った帰りに私は車に轢かれたのだ。
だが何故か今このようにゲーム世界の住人になっている。でも十七年間生きた記憶がちゃんとある。
幼い頃の思い出や両親の顔、学園が舞台のゲームでは出てこなかった情報を沢山持っている。
だから今の私にとっては確かにここは現実世界なのだと思う。
私はフローラ貴族学校の高等部二年で、今居るのは学園の保健室だ。
昼食の誘いに行った時に婚約者に突き飛ばされて頭を打った結果気絶して運ばれたのだろう。
しかし部屋には誰もいない。養護教諭すら。自分の人望の無さに改めてびっくりする。
金髪碧眼の美少年、ルシウス・ウィロー。男爵家の長男で学年一の美男子だ。
私という婚約者がいるが花スク内では攻略対象の一人である。
そして彼の横で私を見ていた美少女生徒は間違いなくヒロインちゃんだろう。
何故なら普通の女子学生という設定なのに髪はピンク色だし更に大きな花飾りを頭につけている。
それで口癖が「私は地味だから」なのだ。地味な学生は校内で頭に花を生やしたりしない。
そのヒロインよりもある意味印象深い存在が花スクにはいる。
「よりにもよって、ね……」
私は深々と溜息を吐くと立ち上がり鏡の前に立った。当然映るのは自らの姿だ。
足首まである黒く光沢のない髪。前髪は流石にそこまで長くないが顔の大部分を覆い隠している。
そこから微かに見える瞳は血走った赤。唇は血色の悪い青紫。学園の制服は白基調なのになぜか私だけ喪服のような漆黒。
昼に存在していい姿ではない。夜の校舎内を四つん這いで高速疾走するのが似合うタイプの女性だ。
「……どう見ても悪霊令嬢リコリス様じゃん」
リコリス・ラディアータ。ゲーム内の悪役令嬢キャラだ。
ルシウスの婚約者の伯爵令嬢だが、この不気味過ぎる容姿とストーカー癖のせいで彼から毛嫌いされている。
しかしそのことを全く気にせずルシウスに付き纏い彼に関するものを何でも収集し続けている変人である。
ルシウスルートを進めなければイベントの度にルシウスを追いかけまわしている顔が怖いギャグキャラにしか見えない。
しかし彼が本気でヒロインを愛しリコリスに婚約解消を申し出た途端自らの命と引き換えに世界を滅ぼそうとする。
それはバッドエンドだが、ノーマルエンドでもいちゃいちゃしている二人の目の前で当てつけに死んだりする。
彼女一人だけでゲームのレーティングをゴリゴリ上げているのだ。
プレイヤーから裏ヒロインと言われネタキャラ扱いされているゲテモノヤンデレ女キャラ。それがリコリス嬢なのだ。
なぜかその姿に私はなっていた。けれど今まで十七年間このゲームのことなど思い出しもせず生きてきた。
ルシウスに突き飛ばされて後頭部を強打しなければ思い出しもしなかったかもしれない。
そして、過去の記憶を取り戻した今私が真っ先に思うことは一つ。
「ルシウス君が気の毒過ぎるからさっさと婚約解消してあげよう!」
前世では一度も恋人ができないままゲーム内の恋愛経験だけ重ねて突然事故死したが、現代人として最低限のモラルは失っていない。
ストーカー駄目絶対。恋という感情は免罪符にならない。だから彼を自由にしてあげよう。好きなだけヒロインちゃんといちゃついてくれ。
それと長すぎる髪も切ろう。このまま暮らしていたら絶対目が悪くなる。私は鏡の中の悪霊、いや悪役令嬢を見ながらそう決心した。