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序章 无意义
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作者: Lesthomas   |   ✉ 发送消息   |   2690字  |   免费   |   2024-04-29 09:17:43
 ぺちゃりぺちゃりと音を立てて星越が私の背後に回ると、手錠だけが外された。かと思うと、身体の前で手錠が再び両腕に嵌められる。

「私がご飯を食べさせている間、乳首でも弄いじくってて下さい。あ、別に脱がなくても良いですよ。その馬鹿みたいな露出の服の下から手を入れれば造作もないことでしょう」
「何言ってんの!?頭おかしいんじゃないの、変態。やっぱり私の身体が目的で」

 言い終わる前に視界が真っ白になり、肺の中の空気が全て一瞬にして体外に放出された感覚があった。鳩尾みぞおちを蹴られたと理解したのは、大声で叫びながら床の上で30秒ほど暴れ回った後だった。
 湊斗くんは、よくスマホで格闘技の試合や動画を見ている。私自身は格闘技など野蛮なものは好むところではないものの、男の子が好きなことは理解している。そんなこんなで彼に勧められて見た動画で、鳩尾に蹴りを入れられた屈強な格闘家が悶絶していたのを思い出す。鍛えられないから人体の弱点なのだろうが、筋骨隆々で痛みにも慣れているであろう男が悶え苦しむものを、何も鍛えておらず、取っ組み合いの喧嘩だってしたことの無い私が耐えられるはずがない。そう、耐えられない。

「減点1、累計9」

 苦痛に曇る意識の上に、刃物のように鋭い言葉が突き刺さる。私は今、何故、こんな場所で、こんなことをしていたのだろうか。大切な書類をシュレッダーして、見られた。だからといってこんな目に遭うだろうか。警察に行けば、暴行罪で……いや、ここは星越の部屋だから、証拠が無い。鳩尾の痛みだって、跡に残る怪我が無ければ診断書も取れない。
 彼女には数多の「弱み」を動画や写真の形で握られている。そもそも私は湊斗くんに心身ともに、就中経済的に生活を依存しており、彼から離れることは死を意味することにやっと思い至った。彼に見放されてもおかしくない不義理を星越に知られている。
 書類を裁断する動画を会社に知られれば、解雇される。この歳になって何の技能も持たない事務屋の女、しかも前務めていた会社で大切な書類を裁断したうえに黙っていた女に働き口などあるだろうか。
 往来で下着を脱いで袋に詰める動画も、恐らく部屋の片隅で数回放置された際の動画も撮られているであろう。
 この段になってようやく、私は気付いた。信じたくなかっただけかもしれない。でも、痛みによる支配により脳髄が「逃げろ」と全力で指令を発したから気付いたのだ。
 やっと、今更、気付いた。



 詰んでいる。


「その家事を知らない綺麗な御手々おててで色の悪い乳首を捏ね繰り回しながら、一口一口礼を述べつつ昼食を食うんだよ。分かったら返事しろ、ウスノロ」

 鼻先に、悪臭と共に足が再び近付き、そのまま口の中に突っ込まれた。

日下主任、今は公共の場で怯える必要はありませんよ」

 次の週、月曜日から連日昼食に誘われて近所の飲食店で食べている。後輩や部下の飲食代を奢る我が社の旧弊に倣って星越の分を出そうとすると制され、知らぬ間に私の分まで支払われており、閉口する。

「私は幸いにもお金には困ってませんから」

 実際、私は生活費を湊斗くんに依存しており、自分の稼ぎは殆どが衣類、化粧品、装飾品類といった身の回りのもので消えている。彼は「女性は何かと入用だし、俺はこれといった趣味もないし」と言って赦してくれているが、見栄を張ったランチすら危うい経済状況である。
 銀行の口座は無論、彼と分けてある。しかし、家賃や光熱水費は彼の口座から支払われ、先般の居室の契約更新の際に、契約の名義を彼に切り替えた。それまで毎月彼の名義の口座から私の契約する部屋の賃料を振り込んでいたが、不動産管理者からすれば面倒な話らしく、彼の薦めもあって切り替えたのである。常に残高ギリギリの私としては渡りに船で、私は一層浪費に注ぎ込んだ。
 彼は、将来への積み立てとして設けた彼名義の口座に貯蓄すらしてくれているというのに。

「日下主任、聞いていますか」
「あ、何。というか私と昼ごはん食べて楽しいの?会話らしい会話もせず黙々と食べるなんて普通じゃない」
「そうですか。私は主任とご一緒できるだけで楽しいですよ。で、口座のことですけど」
「急に口を開いたかと思えばお金の話、良いよねアンタは。羽振りがよさそうで」
「資産運用は現代の基礎教養と言えます。リスクを分散しつつ、身の丈に合った投資と虎の子を残しておく冷静さだけで資産は幾らでも増やせます。他方、主任は貯金とか苦手ですよね、私が増やしてあげますよ」
「余計過ぎるお世話……」
「良いんですか」

 男好きがすると言う童顔の星越が箸を置いて、素手で私の目の前の1,500円のランチプレートの雑穀米に人差し指を突き立てた。そのまま、美しく整われた米粒の山を崩し、相好を崩す。

「本当はこんなもの食べてる余裕なんてないでしょう。彼がせっせと作ってくれたお弁当は毎日どうしてるんですか」

 そう、私は彼の稼ぎまで手を付けているのだ。そんな私を強く言咎めするわけでもなく、毎朝弁当を作ってくれている。優しさとも、浪費への当て擦りとも取れるこの行動に対し、私は中身を駅のゴミ箱に捨てるという不義理で仇を返している。

「もう言うまでもないですね。誰しも叩けば埃くらいは出ますが、もう少し慎重に生きた方が良いんじゃないでしょうか。ちょっと見張ってたら脅しの絶好の材料をくれるんですから、見てるこっちも冷や汗が出ますよ」
「どの……何の写真を……」

 星越が指に付いた米粒をお絞りで丁寧にふき取りながら、独り言のように答える。

「会社の給湯室でビニール袋に弁当の中身を放り込む動画、家の最寄り駅のホームのゴミ箱にそれを捨てる写真」
「私に何しろって」
「ホント、主任は仕事以外じゃウスノロですね。お金を管理して差し上げると言ってるんです。大体わかりましたか?じゃあ、明日は必要なものを持参して午前7時に私のマンションの前に来てください」
「はあ?私が警察に行かないとでも思ってんの、流石にここまでくれば恐喝じゃない」
「誰が主任の口座からお金を使い込むと言いましたか。浪費癖が酷いからファイナンシャルプランナーとして通帳類を管理するだけですよ。残高は逆に増えると思います」
「詭弁、そんな詭弁」
「鈴ちゃんが採れる選択肢が複数あるとは思えませんが」
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